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宿泊業・ホテルの経理|OTA手数料・前受金・客室原価の管理と会計ソフト

更新:2026年7月20日6分で読めます会計ソフト

宿泊業を営む経営者や経理担当者の方にとって、日々の会計処理は「予約サイトごとに条件が違う」「お金が入る日と売上の日がずれる」といった、他業種にはない複雑さを抱えています。OTA経由の予約、前受金、客室原価、繁閑差による資金繰りなど、論点を整理しないまま処理を続けると、利益が見えにくくなり、税務上のリスクも残ります。この記事では、宿泊業特有の経理論点を順に解説し、クラウド会計とPMS連携でどう効率化できるかをまとめます。

本記事は宿泊業の経理実務の理解を助ける一般的な情報提供を目的としています。会計・税務の取り扱いは個々の事業の実態によって異なり、最終的な判断は税理士などの専門家にご相談ください。また、税制や各種制度は改正されることがあるため、最新かつ正確な情報は必ず国税庁の公式サイトでご確認ください。

OTA経由の予約は「売上」と「手数料」を分けて考える

宿泊業の売上で最も処理を間違えやすいのが、OTA(オンライン・トラベル・エージェント。楽天トラベルやじゃらん、Booking.comなど、インターネット上で宿泊予約を仲介するサイトのこと)経由の予約です。結論から言うと、OTA経由でも「宿泊料金そのもの」が自社の売上であり、OTAに支払う販売手数料は別途「経費」として計上するのが基本です。

なぜ分けるかというと、手数料を差し引いた入金額だけを売上として記帳すると、本来の売上規模が小さく見え、消費税の課税売上高の計算にも影響が出るおそれがあるためです。たとえば宿泊料金22,000円(税込)、OTA手数料10%の予約では、売上22,000円と手数料2,200円をそれぞれ記録し、差額の入金を確認するのが正しい流れになります。

実務上は、OTAごとに「手数料率」「入金サイクル」「相殺の有無」が異なる点が悩みどころです。サイトによっては宿泊者から直接現金を受け取り、後日手数料だけをOTAへ支払うケースもあれば、OTAが代金を回収して手数料を差し引いた残額を振り込むケースもあります。どちらの形かを予約サイトごとに把握し、台帳で管理しておくことが、月次の突き合わせをスムーズにする鍵です。

予約経路売上の計上額手数料の扱い入金の特徴
OTA(代金回収型)宿泊料金の全額販売手数料を経費計上手数料控除後の残額が後日入金
OTA(現地決済型)宿泊料金の全額手数料を別途OTAへ支払い宿泊者から現地で受領
自社サイト・電話宿泊料金の全額OTA手数料は発生せず決済手数料のみ控除される場合あり

前受金と売上計上のタイミングは「宿泊日」が基準

事前決済や予約金として宿泊日より前にお金を受け取った場合、その時点では売上にせず、いったん「前受金」(まだ役務の提供が終わっていない段階で先に受け取ったお金を指す負債の勘定)として処理します。実際に売上に振り替えるのは、宿泊サービスを提供した「宿泊日(チェックアウト時点)」が基本です。

この考え方は、収益を提供したタイミングで認識するという会計のルールに沿ったものです。たとえば3月に翌月分の宿泊代を受け取っても、それは3月の売上ではなく、宿泊が行われる4月の売上になります。受け取った月にすべて売上として計上してしまうと、月次の損益が実態とずれ、決算期をまたぐ予約では特に誤りが大きくなります。

キャンセル料の扱いも整理が必要です。宿泊サービスそのものは提供されていないため、キャンセル料は宿泊売上とは性質が異なり、雑収入などで区別して記録するのが一般的です。前受金・売上・キャンセル料を分けて管理しておくと、繁忙期前の予約が積み上がった時期でも、帳簿上の負債と将来の売上を正しく把握できます。

客室原価とアメニティ・清掃費の管理

宿泊業の利益を正しくつかむには、客室を提供するためにかかる原価・経費を分けて見ることが欠かせません。具体的には、清掃委託費、リネン(シーツやタオルなどの寝具・布製品)のクリーニング、シャンプーや歯ブラシといったアメニティ消耗品、客室内の備品交換などが該当します。

これらは「客室を1室稼働させるごとに増える費用」と「稼働しなくてもかかる固定的な費用」に分けて考えると管理しやすくなります。前者は稼働率に連動するため、1室あたりの変動費としておおよその目安を持っておくと、料金設定や閑散期の値引き判断に役立ちます。後者には固定の人件費や施設の維持費が含まれ、損益分岐点(利益がゼロになる売上ライン)を把握する基礎になります。

勘定科目をあらかじめ細かく設定しておくことも重要です。清掃費・消耗品費・水道光熱費などを客室関連としてまとめて集計できるようにしておけば、月ごとの原価率の推移が見え、コスト増の兆候に早く気づけます。どの費用を原価として扱うかは事業形態によって判断が分かれるため、区分の設計は税理士に相談しながら整えると安心です。

繁閑差の大きい資金繰りとキャッシュレス手数料

宿泊業は季節や曜日による繁閑差が大きく、売上が多い月と少ない月の落差が経営を不安定にしがちです。前受金で先にお金が入る一方、OTAへの手数料支払いや人件費、修繕費の支出時期は別に訪れるため、「入金と出金のタイミングのずれ」を見える化することが資金繰り管理の出発点になります。

具体的には、月単位の資金繰り表を作り、前受金として受け取った金額のうちどれが将来の売上で、いつOTA手数料や仕入の支払いが発生するかを並べて確認します。閑散期に資金が不足しないよう、繁忙期の入金を計画的に手元に残す発想が役立ちます。

決済手段手数料の負担者入金までの目安経理上の注意点
クレジットカード宿泊施設側数日〜1か月程度手数料を支払手数料として計上
QRコード決済宿泊施設側サービスにより変動入金額と売上額の差を確認
OTA一括決済宿泊施設側入金サイクルに依存売上と手数料を分離して記帳

キャッシュレス決済では、宿泊料金から決済手数料が差し引かれて入金されることが多く、ここでも入金額をそのまま売上にしない注意が必要です。手数料の種類が増えるほど突き合わせは煩雑になりますが、後述の会計ソフト連携で大幅に省力化できます。

クラウド会計とPMS・予約システム連携で省力化する

ここまでの論点をすべて手作業で処理するのは現実的ではありません。そこで活用したいのが、freee会計やマネーフォワード クラウド会計といったクラウド会計ソフトと、PMS(プロパティ・マネジメント・システム。客室の予約状況や売上を一元管理する宿泊施設向けの基幹システム)や予約システムとの連携です。

連携を整えると、予約データや決済データを取り込み、売上・前受金・手数料の仕訳をある程度自動で起票できるようになります。銀行口座やクレジットカードの入金明細も自動取得できるため、OTAごとに異なる入金額の突き合わせにかかる時間を減らせます。手入力が減ることで、転記ミスや計上漏れのリスクも下がります。

ただし、連携で自動化できる範囲はサービスやプランによって異なり、前受金の振り替えや原価区分など、判断を伴う処理は人の確認が必要な場合があります。導入時には、自社の予約経路と決済手段に合った設定になっているかを丁寧に確認しましょう。自社の論点がどこにあるか整理しきれない場合は、当サイトの無料診断で現状の課題を洗い出すところから始めるのも一つの方法です。

自社に合った進め方を見極めるために

宿泊業の経理は、OTA手数料・前受金・客室原価・資金繰り・決済手数料という複数の論点が絡み合うため、自己流のまま進めると見えないコストや税務リスクが積み上がりやすい領域です。まずは現状の処理がどの論点でつまずいているかを把握し、優先順位をつけて整えていくことが大切です。どの会計ソフトや連携が自社に合うか迷う場合は、当サイトの無料診断を入り口に、課題の全体像を整理してみてください。

まとめ

  • OTA経由でも宿泊料金の全額が売上であり、販売手数料は別に経費計上します。入金額だけを売上にしないことが重要です。
  • 事前決済や予約金は前受金として処理し、売上計上は宿泊日(チェックアウト時点)を基準にします。
  • 客室の清掃費・アメニティ・リネンなどの原価は、変動費と固定費に分けて管理すると利益が見えやすくなります。
  • 繁閑差の大きい宿泊業では、入金と出金のタイミングのずれを資金繰り表で見える化することが欠かせません。
  • キャッシュレス決済では手数料控除後の入金額に注意し、freee会計やマネーフォワード クラウド会計とPMS連携で記帳を省力化できます。
  • 会計・税務の個別判断は税理士に相談し、最新の制度は必ず国税庁の公式サイトで確認してください。

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経理コンパス編集部

業務系SaaS(会計・勤怠・CRM)の利用・導入支援の経験/不動産業界での実務経験

中小企業の経理・バックオフィス担当者が、本当に自社に合うクラウドソフトを選べるように。公式情報と実際の使用感、そして制度(インボイス・電子帳簿保存法)への対応状況を、できるだけ中立に整理して発信しています。

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