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医療・介護事業の会計ソフトの選び方|保険収入の区分と経理の進め方

更新:2026年7月27日9分で読めます給与計算ソフト

医療機関や介護事業所の経理は、一般的な中小企業の経理とは異なる難しさを抱えています。結論から言うと、保険収入と自費(保険外)収入の区分、入金タイミングのずれ、多数のスタッフの勤怠管理という3つの特徴を理解したうえで、この構造に対応できる会計ソフトを選び、勤怠連携の給与計算・経費精算の電子化・会計の3領域から手を付けるのが現実的です。なぜなら、これらは作業量が多く、ミスが起きると資金繰りや職員の信頼に直結するからです。本記事では、クリニックや介護事業所の経理担当者の方に向けて、介護事業向け会計ソフトの選定軸と、経理の進め方の基本を整理します。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務上の助言ではありません。消費税の課税・非課税の判断や個別の会計処理については、必ず顧問税理士などの専門家にご確認ください。制度は改正されることがあり、記載内容が最新であることを保証するものではありません。

医療・介護の経理が「普通の会社」と違う3つの理由

医療・介護の経理が特殊である理由は、収入の構造と人の多さにあります。ここを押さえないと、どのソフトを入れても運用がうまく回りません。順に見ていきます。なお、医療・介護業界の経理課題とおすすめのサービス構成は医療・介護業界向けの特集ページでも整理しています。

保険診療と自由診療・保険外サービスの区分が必要

まず、収入を「保険」と「保険外」に分けて管理する必要があります。保険診療(公的医療保険が適用される診療)や介護保険サービスは、料金や請求の仕組みが制度で決まっています。一方、自由診療(健康診断や自費の予防接種など保険が使えない診療)や、介護の保険外サービス(配食・付き添いなど)は、事業所が料金を決めます。

この区分が重要なのは、消費税の扱いが両者で変わる場合があるためです。保険診療は消費税が非課税(税金がかからない取引)とされる一方、保険外には課税されるものがあります。ただし線引きは複雑で、サービス内容によって判断が分かれます。具体的にどれが課税かは断定せず、顧問税理士に確認するのが安全です。

入金サイクルが後ろにずれる

次に、保険分の入金が「後払い」になる点です。保険診療や介護保険サービスの報酬は、その月にサービスを提供しても、審査支払機関へ請求(レセプト請求と呼びます。診療報酬明細書のことです)を出してから、入金は通常2か月ほど後になります。介護保険サービスの場合、この請求先は国保連(国民健康保険団体連合会)です。

つまり、提供月と入金月がずれるため、帳簿上の売上と実際の現金の動きが一致しません。この「ずれ」を意識せずに資金を見ていると、手元資金が足りなくなる恐れがあります。未収金(まだ受け取っていない売上)として管理し、入金予定を把握しておくことが資金繰りの基本になります。

スタッフが多く、シフト勤務で勤怠・給与が煩雑

3つ目は人の多さです。クリニックや介護事業所は、看護師・介護職・事務・パートなど多様な職員を抱え、夜勤や早番・遅番といったシフト勤務が一般的です。

そのため、勤怠の集計と給与計算が毎月の大きな負担になります。深夜割増や各種手当、社会保険の計算など、確認すべき項目が多く、手作業では時間もミスのリスクも増えます。ここを効率化できるかが、経理担当者の働きやすさを大きく左右します。勤怠と給与をつなぐ仕組みの考え方は給与計算と勤怠連携の重要性で詳しく解説しています。

介護事業向け会計ソフトの選び方

「会計ソフト 介護」で探すと介護専用をうたう製品も見つかりますが、大切なのは専用かどうかよりも、介護事業の収入構造と組織構造を管理できるかです。選定軸は次の4つに整理できます。

選定軸確認したいポイントなぜ重要か
介護保険収入と自費の区分管理勘定科目や補助科目、タグなどで保険収入・自費収入を分けて集計できるか消費税の扱いが異なる場合があり、区分できないと税務確認や経営分析が難しくなるため
部門別・施設別会計事業所やサービス種別(デイサービス・訪問介護など)ごとに損益を分けて見られるか事業ごとの採算を把握でき、行政への報告や経営判断の材料になるため
国保連請求ソフトとの役割分担請求業務は介護ソフト、会計は会計ソフトと割り切り、売上データをどう会計へ渡すか運用を決められるか国保連へのレセプト請求は介護ソフトの領域で、会計ソフトはその結果を帳簿に反映する役割だから
処遇改善加算の管理加算による収入と、職員への賃金改善の支出を後から追える形で記録できるか処遇改善加算は賃金改善に充てることが前提の加算で、実績の記録・報告が求められるため

介護保険収入と自費の区分管理

介護事業の収入には、介護保険から給付される部分、利用者の自己負担部分、保険外の自費サービスが混在します。会計ソフト側で、これらを勘定科目・補助科目・タグなどの機能で分けて記録できるようにしておくと、消費税の確認や売上分析がスムーズになります。どの区分をどの科目に割り当てるかは、導入時に顧問税理士と相談して決めておくのがおすすめです。

部門別・施設別に損益を分けられるか

デイサービスと訪問介護を併設している、複数の施設を運営しているといった場合は、部門別会計(事業所やサービスごとに収支を分けて集計する機能)が使えるかを確認しましょう。全体では黒字でも特定の事業が赤字ということは珍しくなく、分けて見られないと手の打ちようがありません。クラウド会計の基本的な仕組みから知りたい方はクラウド会計ソフトとはから読むと全体像がつかめます。

国保連請求ソフト(介護ソフト)との役割分担

介護報酬の請求は、いわゆる介護ソフト(国保連請求ソフト・請求業務や利用者管理を行う業務ソフト)で行うのが一般的で、会計ソフトが国保連請求を代替するわけではありません。つまり「介護ソフトで請求し、その売上・入金の結果を会計ソフトに記録する」という分担になります。毎月の売上をどうやって会計ソフトへ反映するか(データ連携・CSV取り込み・手入力のいずれか)を導入前に決めておくと、月次の締め作業が安定します。

処遇改善加算の管理

処遇改善加算(介護職員の賃金改善を目的とした加算)を取得している事業所では、加算で得た収入と、職員への賃金改善の支出を対応づけて説明できる状態にしておく必要があります。会計ソフト側で加算収入を区分して記録し、給与側で改善分の支給を確認できるようにしておくと、実績報告の準備が楽になります。具体的な要件や報告方法は制度改正の影響を受けるため、最新の行政資料や専門家への確認を前提にしてください。

経理で優先度が高い3つの領域とソフト選び

限られた人手で進めるなら、効果の大きい領域から取り組むのが鉄則です。優先度が高いのは、給与計算・経費精算・会計の3つです。それぞれの考え方と、参考になる実在サービスを挙げます。

自社にどこから手を付けるべきか迷う場合は、当サイトの無料診断を使うと、事業所の状況に合った優先順位の目安をつかみやすくなります。

優先領域主な課題効率化のポイント参考サービス例
勤怠連携の給与計算シフト・夜勤・手当の計算が煩雑勤怠データを給与に自動で取り込むfreee人事労務、マネーフォワード クラウド給与
経費精算の電子化立替・領収書処理に手間がかかる領収書の読み取りと申請をデジタル化TOKIUM経費精算
会計保険・保険外の区分や試算表作成銀行・給与データと自動連携freee会計

勤怠連携の給与計算

最優先したいのは、勤怠と給与をつなぐ仕組みです。なぜなら、医療・介護では人件費が最も大きな支出であり、計算の手間も最大だからです。勤怠の打刻データをそのまま給与計算へ引き継げれば、転記ミスや集計の時間を減らせます。freee人事労務やマネーフォワード クラウド給与は、勤怠から給与・明細発行までを一連で扱える例として知られています。

経費精算の電子化

次に、経費精算のデジタル化です。職員の立替えや備品購入が多い現場では、紙の領収書のやり取りが負担になりがちです。TOKIUM経費精算のように、領収書の読み取りや申請・承認をオンラインで完結できる仕組みを使うと、月末の処理が軽くなります。電子帳簿保存法(電子データでの保存ルールを定めた法律)への対応の観点からも、早めの電子化が役立ちます。経費精算システムと会計ソフトの関係は経費精算システムと会計システムの違いで整理しています。

会計

最後に会計です。日々の取引を記録し、試算表(一定時点の財政状況をまとめた表)を作る土台になります。freee会計などのクラウド会計は、銀行口座やクレジットカード、給与ソフトのデータと連携でき、入力の手間を抑えられます。保険・保険外の区分を勘定科目や補助科目で整理しておくと、後の税務確認もスムーズです。

ソフト選びで失敗しないための視点

ソフトは「機能の多さ」より「自社に合うか」で選ぶことが大切です。理由は、現場で無理なく続けられなければ、どんな高機能でも定着しないからです。

具体的には、同じ提供元でサービスをそろえると連携がスムーズになりやすい点、サポート体制や料金、職員が使いこなせる操作性を確認するとよいでしょう。導入前に無料プランやお試し期間で実際の使い心地を試すことをおすすめします。主要な会計ソフトを横並びで比べたい方は中小企業向け会計ソフト比較も参考になります。判断に迷うときは、まず当サイトの無料診断で現状を整理してみてください。

よくある質問

介護ソフト(国保連請求ソフト)と会計ソフトの違いは何ですか?

役割が異なります。介護ソフトは利用者管理や介護報酬のレセプト請求(国保連への請求)を行う業務ソフトで、会計ソフトはその結果としての売上・入金・経費を帳簿に記録し、決算や申告の土台を作るソフトです。介護ソフトが会計ソフトの代わりになるわけではなく、両方を役割分担させて使うのが基本形です。

小規模なデイサービスに専用の会計ソフトは必要ですか?

必ずしも介護専用の会計ソフトである必要はありません。一般的なクラウド会計ソフトでも、補助科目や部門機能を使えば保険収入と自費の区分管理は可能です。それよりも、国保連請求は介護ソフト側で行う前提を押さえたうえで、毎月の売上をどう会計に反映するかの運用を決めることが先決です。判断に迷う場合は顧問税理士に相談してみてください。

医療法人と個人クリニックで会計ソフトの選び方は変わりますか?

基本的な選定軸(保険・自費の区分、勤怠連携、連携のしやすさ)は共通ですが、法人は決算書の作成や行政への報告書類が増えるため、法人対応のプランや税理士との共有機能を重視する傾向があります。個人クリニックは確定申告への対応のしやすさが軸になります。自院の形態に合わせて、対応範囲を確認して選びましょう。

訪問看護ステーションの会計で気をつけることはありますか?

訪問看護は、利用者の状態によって医療保険と介護保険のどちらから報酬が支払われるかが分かれる点が特徴です。請求先や入金のタイミングが収入の種類ごとに異なるため、会計上も収入の区分を分けて記録し、未収金の管理を丁寧に行うことが大切です。区分の詳細な処理は顧問税理士に確認してください。

まとめ

  • 医療・介護の経理は、保険収入と自費・保険外サービスの区分、入金が後ろにずれる入金サイクル、多数のスタッフのシフト勤怠という3つの特徴があります。
  • 介護事業向けの会計ソフトは、介護保険収入と自費の区分管理・部門別/施設別会計・国保連請求ソフトとの役割分担・処遇改善加算の管理という4つの軸で選ぶと失敗しにくくなります。
  • 国保連へのレセプト請求は介護ソフトの役割で、会計ソフトはその結果を帳簿に反映する分担が基本です。
  • 消費税の課税・非課税の扱いは複雑なため、具体的な判断は自己判断せず、顧問税理士に確認しましょう。
  • 優先度が高いのは、勤怠連携の給与計算・経費精算の電子化・会計の3領域です。参考サービスとして、給与はfreee人事労務やマネーフォワード クラウド給与、経費はTOKIUM経費精算、会計はfreee会計などがあります。
  • ソフトは機能の多さより自社に合うかで選び、無料プランやお試し期間で操作性を確かめると失敗しにくくなります。

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経理コンパス編集部

業務系SaaS(会計・勤怠・CRM)の利用・導入支援の経験/不動産業界での実務経験

中小企業の経理・バックオフィス担当者が、本当に自社に合うクラウドソフトを選べるように。公式情報と実際の使用感、そして制度(インボイス・電子帳簿保存法)への対応状況を、できるだけ中立に整理して発信しています。

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